ヒグマのリホーミングプロジェクト完了のご報告|日本動物福祉協会の活動は、全て会費とご寄付で成り立っています

動物関連事業トピックス

NEW!!ヒグマのリホーミングプロジェクト完了のご報告

動物関連事業トピックス

  • 本件の経緯

今回、英国に譲渡された4頭のヒグマたちの劣悪な飼養環境の相談は海外旅行者を中心に数年前から毎年のように当協会によせられていました。その度に、行政への指導をお願いしていましたが、一向に減らない苦情に、2年前にはじめて、アイヌ民族博物館を視察しに行きました。その結果、あまりに狭いコンクリート床の檻の中で、日々残飯を与えられて正常な行動が出来ずにいるヒグマの状態が確認された為、至急、博物館には改善要請と改善にかかる資金援助の申し出をいたしました。

博物館の回答は、2018年春には博物館は閉館になり、新たな国立公園に生まれ変わるため、ヒグマの譲渡先を探したいので協力してほしいとのことでした。そこで、適切な環境を整えている日本国内の動物園等に連絡をし、探しましたが、残念ながらみつけることができませんでした。そのようなときに手を差し伸べてくれたのが英国の団体であるWild Welfare(WW)でした。WWは、英国での譲渡先を探し、ヨークシャー野生動物公園(YWP)と交渉し、それが本プロジェクトに繋がることになりました。

 

<これまでの流れ>

  • 2016.10.12   当協会職員による視察
  • 2016.10末   ヒグマの飼養環境改善の意見書を博物館に提出
  • 2016.12末   博物館から譲渡先を探していること、協力してほしいとの回答。同時期にWWのGeorgina氏より英国への譲渡案を打診されるも、日本の問題であるため、日本で解決を図るべきと考え、日本国内での譲渡先を探す
  • 2017.2.~3   多方面に確認したが国内での譲渡先を見つけることは困難であると判断し、英国への譲渡を検討
  • 2017.7.11      Georgina氏らとアイヌ民族博物館を訪問し、英国譲渡を提案
  • 2017.9     博物館が英国への譲渡を前向きに検討
  • 2017.12     受け入れ候補のYWP職員らとアイヌ民族博物館を訪問。英国のヒグマ受け入れ施設の設計図を提示。来年早々に同意書を交わす約束をする。同意を得次第、英国は建設開始
  • 2018.2.23    相互同意を締結
  • 2018.3     輸出許可のための準備を開始。
  • 2018.4     英国YWPのヒグマ施設完成
  • 2018.7     経産相から輸出許可がおりる。熊檻制作開始。
  • 2018.7.31-8.1  北海道白老町で英国チームと日本チーム獣医師を交えたミーティング及びシュミレーション実施
  • 2018.8.2    英国へ輸送
  • 2018.8.3    ヒグマたちが無事に英国YWPに到着

 

  • プロジェクト当日

2018年8月2日(木) AM4:00打合せ 4:15頃から作業開始

アムール、海、陸の3頭は吹き矢で麻酔を投与、ハナコは自ら檻に入り無麻酔、全4頭を移動用の熊檻に収容しました。

日本人獣医師(北大の教授・のぼりべつクマ牧場の獣医師)2名、英国獣医師1名で麻酔投与・モニタリングを行い、熊の誘導・牽引などの作業には塚原鉄工所・猟友会・アイヌ民族博物館の従業員などで行いました。

空調15℃に設定されたDHLジャパンの移動用10tトラックに載せる作業などを経て、

11:00頃 全行程作業を完了し、アイヌ民族博物館を出発して新千歳空港へ向かいました。

新千歳の税関チェックや重量計測などを行い15:30ごろに貨物倉庫へ移動。

高齢のアムールはしばらく横臥位のままで体調が心配されたが、水・スイカ・ドーナッツを少し摂取し起立する姿もみられました。

18:00、19:00の2便で羽田空港へ向かい、羽田空港貨物倉庫で当協会の町屋獣医師がヒグマ状態確認を行う。問題がないため、ヒグマ4頭は深夜13:55便で英国へ向けて出発しました。

8月3日の15:00頃に英国に到着。

それからヒースロー空港で検疫を受けた後、無事4頭とも新しいお家であるヨークシャー野生動物公園に到着しました。

(※時間は全て日本時間で表記)

  • プロジェクトを終えて…

英国ではクマの生理・生態・習性にあった環境が用意されているとはいえ、17年~30年近く狭い檻しか知らずに過ごしていた個体を、長距離移動をさせてまで譲渡することは人間側のエゴではないかと悩みました。しかし、彼らが私達の心配をよそに英国の新しい環境で伸び伸びと元気に過ごし始めているとの報告を受け、何十年と劣悪な環境で過ごそうが、本能は種に適した環境を忘れていないことが証明されたことに感動と安堵をおぼえました。

本プロジェクトは、譲渡先であるヨークシャー野生動物公園スタッフ(YWP)、英国のコーディネートを担当したワイルドウェルフェア(WW)のジョージーナ氏の英国チームとアイヌ民族博物館職員、北海道大学坪田教授、のぼりべつクマ牧場松本獣医師、完璧なクマ檻を作成してくれた塚原鉄工所(英国チームが大絶賛していました!)の日本チームと難しい輸送を実現してくれたDHLジャパン及びJALの職員の方々の協力がなければ実現しませんでした。

当日のチームワークは本当に素晴らしく感動しました。ここまでの道のりは本当に大変ではありましたが、今は沢山の方々のクマたちの幸せを想う気持ちが昇華され、叶ったことを本当にうれしく感謝の思いでいっぱいです。

本プロジェクトにかかる経費はYWPがほとんど負担しています。(最終決算はまだですが)約50万ポンド(約7500万円)現段階で見積もられています。また本プロジェクトはJAWUKの資金援助も受けております。本プロジェクトは英国の金銭的支援もあって実現したことに本当に感謝しております。

当協会は日本のコーディネートを担当しましたが、日本側は本件を美談とせず、日本固有種すら自国でケアできない体制であることを反省・教訓とし、日本にもサンクチュアリー等の設置を検討していく必要があると考えています。また、30年近く硬いコンクリートで過ごしていた一個体は四肢及び脊椎に重度の障害を負っていました。このことから、展示動物の適切な飼養環境を含めた福祉の啓発も必要不可欠であると考えています。

今後も、当協会では、毎年、「展示動物の福祉」についての研修会を開催していく予定です。

 

ヨークシャー野生動物公園HP(本件についての記事):https://www.yorkshirewildlifepark.com/brownbearsarrive

ヨークシャー野生動物公園youtube(ヒグマたちの新しいお家の様子)